バッグや財布の話題ばかりが先行しがちなブランドにも、実は静かに進化を続けているカテゴリーがある。ボッテガ・ヴェネタのメンズレディトゥウェアだ。ルイーズ・トロッターが手がけた最初のフルシーズンのメンズコレクションは、テーラリングそのものを一から見直すという、思った以上に野心的な内容になっている。 このガイドでは、今のボッテガ・ヴェネタのメンズウェアで実際に注目されているポイントを、コレクションの背景から具体的なアイテムまで掘り下げて紹介する。 ショールームから工房への回帰 ボッテガ ヴェネタ のメンズコレクションについて、トロッターが目指したのは「仕立てをショールームから工房へ取り戻す」という発想だった。生地、フォルム、そして手の動きそのものを、あらためて職人の手仕事の中で捉え直すという方針は、単なる見た目の刷新以上の意味を持っている。 コートもスーツもパンツも、まるで内側から組み立てられているかのような作りになっていて、裏地や芯地、裁断そのものが構造として機能している。この繊細でありながら緻密な仕上がりは、遠目には気づきにくいが、実際に袖を通すと明確に感じ取れる違いだ。 彫刻的な肩線と柔らかいドレープの共存 今シーズンのテーラリングで特に語られているのが、彫刻のようにしっかりとした肩のラインと、そこから続く柔らかなドレープの組み合わせだ。硬さと柔らかさという、本来相反する要素を一着の中に同居させるという試みは、簡単なようでいて実際には高度な技術を要する。 スーツはただ形を保つのではなく、着る人の動きに合わせてゆっくりと形を変えていくような作りになっている。呼吸するように動くテーラリングという表現がされているのも、この柔軟さゆえだ。 ウールとレザーを粘土のように扱うという発想 素材の使い方にも独自の哲学が見える。ウールギャバジン、ペーパーコットン、洗い加工を施したレザーが、まるで粘土のように扱われ、着用を重ねるごとに形が変化していくことを前提に設計されている。 この考え方は、完成された一着を売るのではなく、着る人とともに育っていく一着を提案するという姿勢の表れだ。素材そのものが硬直したものではなく、時間とともに変化する生きた存在として扱われている点が、他の多くのブランドのテーラリングとは一線を画している。 ニットウェアに宿る即興的な遊び心 スーツ以外では、ニットウェアの表現にも独自の工夫が光る。スカーフを盾のように巻きつけたり、セーターを結んで落ち着きを演出したりと、決まりきったスタイリングではなく、その場での即興性を感じさせる着こなしが提案されている。 […]